介護施設の費用は年金で大丈夫?

認知症初期症状・軽度

親がアルツハイマー型認知症になると徐々に進行していきます。一般的には、初期(0年~5年くらい)軽度のときには、「数分前から数日前に覚えた記憶の喪失」、「同じことを何度も聞いたり、言ったりする」、「しまい忘れや置き忘れが目立つ」、「役所などで手続きができない」等が見受けられます。

認知症 中等度~高度

中等度(5年くらい~)には、「薬の管理ができない」、「気候にあった服が選べない」、「風呂の調整やお手洗いがうまくできない」等、高度(10年もしくは15年~)になると「同居の家族がわからない」、「家でトイレができない」などが見受けられます。

 

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認知症と介護費用

認知症 在宅介護?施設介護?

アルツハイマー型認知症であった私の親の場合も同様で、親の記憶がおかしいと思って初めて診断を受けたときから約6年経過したあたりから「風呂に入らなくなったり」、「お手洗いがうまくできなく」なってきました。このような状況になると、親の介護を「在宅介護」でこのまま続けるのか、「施設介護」なのか選択しなければならないでしょう。子供が仕事をしている場合は、在宅介護は難しいかもしれません。

 

ただし、現実的には、親自身は認知症の自覚がなく、「認知症ではないのにどうして施設に入るのか」等理解を示さない場合もあります。

認知症人口が2025年には約700万人

2025年には認知症患者が約700万人との推計があります。高齢者5人に1人は認知症だということです。ご参考までに「厚生労働省より令和元年6月20日の認知症施策の総合的な推進について」のなかに75歳から79歳での認知症有病率は男性9.6%、女性11%でしたが、長生きすると認知症になる確率がグーンと増えます。

 

例えば、80歳になると(80歳~84歳)男性20%、女性24%となり、85歳から89歳では男性35.6%、女性48.5%です。特に女性は90歳まで約半数の方が生存し、その半数の方が認知症ということになります(出所:認知症施策の総合的な推進について)。

 

高齢になればなるほど発症リスクが高まります。50歳代から60歳代前半の子世代夫婦の場合は、夫婦のご両親ともが認知症になるのは不思議ではありません。以前、報道で長生き時代になると認知症は避けて通れず、唯一、認知症の数が減少するのは寿命が短命化すれば減少すると聞いたことがあります。

年金の平均受給額

国民年金受給権者の老齢基礎年金の平均年金月額は、令和4 年度末現在で約5万6千円、厚生年金保険(第1号)受給権者の平均年金月額は、令和4年度末現在で、老齢年金は約 14 万5千円となっています。

(参照令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況  )

介護費用は年金収入だけ賄えるのか

国民年金の場合

<ユニット型個室の場合>

仮に、単身世帯の80歳のAさんは、老齢基礎年金の平均年金月額である「5万6千円」とした場合、要介護5で特別養護老人ホーム(以下「特養」という)のユニット型個室に入所したとします。

 

施設代(ユニット型個室)は、Aさんは住民税非課税世帯ですが、預貯金が1,500万円あったとします。サービス費(約2万8千円)に食費・居住費(約10.4万円)に日常生活費(約1万円)を加えて1ヶ月(30日)合計約14万2千円となり、毎月約8.6万円の赤字で預貯金の取り崩しとなります。

 

一方、80歳の単身世帯のBさんは、Aさん同様、年金だけ収入で平均月額の5万6千円で預貯金がなしの場合はどうでしょうか。

 

Bさんは、住民税非課税で預貯金額も一定の金額しかないので「居住費・食費」の軽減があります。施設代(ユニット型個室)は、サービス費(約2万8千円)に食費・居住費(約3.6万円)に日常生活費(1万円)を加えて1ヶ月(30日)合計約7万4千円となり、毎月約1.8万円の赤字で預貯金の取り崩しとなります。

 

ただし、Aさん、Bさんともに預貯金の要件のない高額介護サービス費があり、サービス費の上限は1万5千円となります。支払ったサービス費約2万8千円との差額1.3万円が戻ってきます。

 

Aさんは実質約7.3万円の赤字、Bさんは、約0.5万円の赤字になります。

 

参照:厚労省 サービスにかかる利用料 

<多床室の場合>

上記の条件と同じであるAさんの場合、サービス費(約2万5千円)に食費・居住費(6.9万円)に日常生活費(約1万円)を加えて1ヶ月(30日)合計約10万4千円となり、毎月約4.8万円の赤字で預貯金の取り崩しとなります。さらに、高額介護サービス費で約1万円が還付されますので、実質約3.8万円の赤字ですが、預貯金が1,500万円あるので、おおよそ110歳くらいまで長生きしてもは大丈夫です。

 

一方、Bさんの場合は、預貯金が一定額以下なので「居住費・食費」の軽減があります。施設代は、サービス費(約2万5千円)に食費・居住費(約2.3万円)に日常生活費(1万円)を加えて1ヶ月(30日)合計約5万8千円となり、毎月約0.2万円の赤字、ただし、高額介護サービス費があるので、実質は、0.8万円の黒字になります。

 

参照:厚労省 サービスにかかる利用料 

厚生年金の場合

一方、厚生年金保険(第1号)受給権者の平均年金月額である「 14 万5千円」の場合はどうでしょうか。Cさんは、単身世帯で80歳、預貯金なしと仮定します。Aさん等と同様に要介護5で特別養護老人ホーム(以下「特養」という)のユニット型個室に入所したします。

 

施設代は、住民税課税世帯のため、サービス費(約2万8千円)に食費・居住費(約10.4万円)に日常生活費(約1万円)を加えて1ヶ月(30日)合計約14万2千円となり、ユニット型個室でも年金の範囲内で施設代は支払えるのではないでしょうか。ただし、各施設との契約のため、施設代が増える場合もあり、あくまでも上記数字は目安になります。

参照:厚労省 サービスにかかる利用料 

まとめ

高齢の親が認知症になった場合、在宅介護もしくは施設介護、また、施設であればどのタイミングか等検討することは多いでしょう。また、子供が仕事をしている場合は、施設介護を在宅介護は難しいのではないでしょうか。

 

施設介護では、さらに民間施設か公的施設なのかでも検討する必要があります。比較的安価な公的施設は地域によってはすぐに入所できない等あるかもしれません。一方、民間施設である有料老人ホームの場合は、施設代がピンキリです。また、親の年金の範囲内で賄いたいときは、まずは、公的施設を検討してはどうでしょうか。

 

公的施設であれば、親が国民年金だけで預貯金がなかった場合は、年金が平均額であってもある程度、多床室であれば施設代を賄うことができるのではないでしょうか。ただし、ユニット型個室や病気等して特養の施設代と入院費がダブルでかかったりするなどの場合は、国民年金だけでは不足することも考えられます。

 

一方、厚生年金の平均受給額の場合で預貯金がない場合は、ユニット型個室、多床室共に賄うことができるのではないでしょうか。ただし、ユニット型個室の場合は、ゆとりはほとんどなく子供による支援も必要かもしれません。なお、施設代は各施設によって異なりますので、入所希望の施設に確認しましょう。